2023 年全国硕士研究生招生考试 203 日语真题
I. 基礎知識
Directions: 次の文章を読んで、1~20の問いに答えなさい。答えは選択肢[A][B][C][D]からもっとも適切なものを1つ選びなさい。(1点×20=20点)
風薫る五月、青葉若葉の季節といわれ、一年の中(1)もっともすがすがしい時期といえる。だれもが野の香りを愛し自然の美しさに気をうばわれ、一句を口ずさむといった風流な気持になるころといえる。ところが、この時期は風流心どころではなく、思い悩む人が一気に増える(2)特徴的だ。それは五月病といわれるものだ。一般的に五月病(3)、かつては学生、特に大学入学後に多くみられたものであったが、(4)近ごろは様変わりをしたようで大学生特有の病気ではなくなってしまったようだ。ひと昔前(5)大学入学後の学生が理想とかけ離れた学園生活に失望して精神的に滅入ってしまい、(6)に似た症状を示すものを総称したものであった。本格的にまじめ、神経質な人に多く、ただ、有名大学入学だけを目標にして将来のことが明確でない者が五月病の元祖だ。大学へ入った(7)人生の目標が終わってしまい、自失の状態になるとても不思議な現象は日本独特のものだろう。学生病であったものが、このところ、職場、家庭にまで発生しているという。それもかなりの数にの
1.
答案 D
解析「~の中で」は範囲(一年のうち)を示す固定表現。「一年の中でもっともすがすがしい時期」としなければ範囲指定にならず、が(主語)・に(対象)・を(…
2.
答案 A
解析「増えるのが特徴的だ」と、節を名詞化して主語にする必要がある。「のが」のみが主語を作れ、ので(理由)・のに(逆接)・のを(目的語)では文が成り立…
3.
A) といえば
B) となると
C) となれば
D) というなら
答案 A
解析「五月病といえば」は「~と言えば」で話題を提示する表現。後が「かつては…であった」と過去の実態を述べるので、条件を表すとなると・となれば・という…
4.
A) どうか
B) どうも
C) どうにか
D) どうにも
答案 B
解析「どうも~ようだ」は「どうやら~らしい」と推量を表す固定結び。どうか(願い)・どうにか(なんとか)・どうにも(否定と共に)では推量表現にならない…
5.
答案 C
解析「ひと昔前までは…であったが、近ごろは…」と過去と現在を対比する。まではが「その時点までそうだった」を表し、からは・からも(起点)やまでも(強調…
6.
A) セロテープ
B) スローガン
C) コンクール
D) ノイローゼ
答案 D
解析五月病は精神的な落ち込みであり「ノイローゼ(神経症)に似た症状」と説明される。セロテープ・スローガン・コンクールは病名・症状ではなく文脈にそぐわ…
7.
答案 B
解析「大学へ入っただけで、人生の目標が終わってしまい」と、単に入学したという事実だけで目的が失われたと言う。だけでが「それだけの理由・手段で」を表し…
8.
A) かかりやすい
B) かなえやすい
C) かかえやすい
D) かわりやすい
答案 A
解析五月病は病気なので「(病気に)かかりやすい」が適する。かなえやすい(願いをかなえる)・かかえやすい(抱える)・かわりやすい(変わる)は、病気に罹…
9.
答案 C
解析文中の空欄は主述関係を作る必要があり、主語を标记する「が」が入る。で(場所・手段)・に(対象・時)・を(目的語)では文の格関係が成り立たない。
10.
答案 C
解析五月病の症状は意欲低下や引きこもりであり「無口(無口になる=口数が減る)」が合う。無駄(無駄遣い)・無念(残念)・無用(必要ない)は症状を表さな…
11.
答案 D
解析「もらい(~てもらう)」は他者に何かしてもらう受益を表す。やり・くれ・あげは「こちらが相手に与える」方向で、文意の受益関係(~してもらう)と合わ…
12.
答案 B
解析「~ぐらい」はおおよその分量・期間を表す。文中でおおまかな期間・程度を示すのに適し、ばかり・だけ(限定)やほど(比況・程度の上限)では文意に合わ…
13. 文中の「気をうばわれ」の「れる/られる」と同じ使い方のものはどれか。
A) 彼の発言に感心せずにはいられない。
B) 先生は別れを惜しまれているようだった。
C) 新婚夫婦は仲人に手をとられて退場した。
D) 君はいつも遅くまで寝ていられて幸せだね。
答案 C
解析文中「気をうばわれ」は「奪われる」の直接受身。選択肢では「手をとられて」が「仲人に手をとられる」という直接受身で一致。A・Dの「いられない/いら…
14. 文中の「大学生特有・・・しまったようだ」の「ようだ」と同じ使い方のものはどれか。
A) 彼は暗いところに独り座って何か考えごとをしているようだ。
B) 彼女はもう 30なのにいつも女子学生のような格好をしている。
C) 明日は大事な会議があるので、今日は早く寝るようにしなさい。
D) 彼はまだ青年なのに、すっかり老け込んでまるで老人のようだ。
答案 A
解析文中の「ようだ」は様子・状況からの推量(~らしい)。Aも「考えごとをしているようだ」と外見からの推量で一致。B・Dは「~のようだ(比況・類似)」…
15. 文中の「それもかなりの数にのぼるというから実にやっかいなことだ」の「という」と同じ使い方のものはどれか。
A) ここ二週間というものはとても忙しかった。
B) 上海万博の入場者は 7000万を超えたという。
C) これは歓迎会というほどのものではない。
D) 彼は「知らない」というだけで、それ以上何も言わない。
答案 B
解析文中の「という」は直前の事実(数にのぼる)を内容として提示し、「~という(こと)だから」と理由を言う。Bも「7000万を超えたという」と事実を内…
16. 文中の「ギャップ」の意味と同じものはどれか。
A) トラブル
B) バランス
C) 食い違い
D) やり違い
答案 C
解析文中の「ギャップ」は理想と現実などのずれ・食い違いを意味する。選択肢の「食い違い」が「一致しないこと・ずれ」を表し一致。トラブル(問題)・バラン…
17. 文中の「症状としては…・・よく似ている」の「ている」と違う使い方のものはどれか。
A) 彼はしっかりしている人だから安心しなさい。
B) 彼女の前にすわっている男の人が王さんです。
C) さくらの花びらが水面いっぱいに漂っている。
D) 父は朝から、二階の書斎で論文を書いている。
答案 D
解析文中「似ている」は結果としての状態を表す。A「しっかりしている」・B「すわっている」・C「漂っている」も状態の「~ている」。D「書いている」は今…
18. 文中の「家庭内で・疑ってみることだ」の「ことだ」と同じ使い方のものはどれか。
A) 立派な文章を書くには、何よりもまず正しい考え方を持つことだ。
B) 強調せねばならないのは、31日までに帰校すべきだということだ。
C) あそこの奥さんは若くて料理もよくできて、本当に羨ましいことだ。
D) 地下水の特性としては量が非常に多いこと、水質が良好であることだ。
答案 A
解析文中の「ことだ」は「~すべきだ(勧め・指示)」を表す。Aも「まず正しい考え方を持つことだ」と勧め・指示で一致。Bは「ということだ(内容説明)」、…
19. 文中の「香り」の「香」の読み方はどれか。
答案 A
解析「香り(かおり)」の「香」は訓読みで「かお」。「こう」(音読み、香水など)・「にお」(匂)・「かんば」(香ばしい)は当てはまらない。
20. 文中の「一気」の読み方はどれか。
答案 D
解析「一気(いっき)」は「一(いつ)+気(き)」の促音化で「いっき」と読む。「いき」「いけ」は促音がない、「いっけ」は「気」の読みが誤り。
読解 [一]
Directions: 次の文章の[一][二][三][四]を読んで、21~40の問いに答えなさい。答えは選択肢[A][B][C][D]からもっとも適切なものを1つ選びなさい。(2点×20=40点)
正しい理解のために必要なのは、場面を共通にすることであった。場面の共有のためには、まずこちらが相手の立場になってみることが必要である。事柄は複雑多岐である。その事柄をお互いに違った面から見ていたのでは意見の一致はない。相手がどういう立場で、どういう態度で、事柄のどの面を見て
いるかをまず考えてみることが必要である。議論を聞いていると、一方が自分の立場で事柄の一面を見て論じているのに、他方は異なった立場で事柄のほかの面を見て反論し、お互いに一歩も譲らず論じ合っている場合がよくある。こういうのを水掛け論と言う。(ア)、揚げ足取りということがよく行われる。これは相手の言葉の一部分を取ってその非を攻撃するのである。相手の立場に立って聞くということは、相手を包む場面を理解することである。言葉の一部分を取るということは、場面を無視して、その言葉だけを取ることで、正しい言葉の受け取り方ではない。相手の立場は相手の言葉の全体を聞いて初めて理解できるのであり、文脈を無視して一部分の言葉だけを取るならば、相手の言わんとすることをどういうふうにでも曲げて取ることができるのである。文脈を理解するということは、言葉の連なり全体の奥に、相手の言わんとすることをつかむことである。なお言葉の文脈ばかりでなく、言葉に現れていない場面をも考慮に入れて、相手の発言を理解してやることが、いっそう親切であり、いつそう正しい理解ができることとなる。この場合、そういう場面をも含めて文脈と言う人があり、そういう理解を文脈的理解と言っている。さて、事柄の理解は相手の立場に立って、事柄を見ることをもって終わらない。次には自分の立場から事柄を直視することが必要である。この場合には自分の過去の体験がもとになり、自分の素養、自分の才能が基礎になって事柄を見ることになる。こうして自分の見た事柄と、相手の立場から見た事柄とを比較することから批判が生まれる。批判的に話を聞いたり批判的に書物を読んだりすることは、水掛け論や揚げ足取りとは違って、あくまで事柄自体を正しく理解するための自他の見方の対決なのである。批判のない読み方や聞き方は、他人の目で事柄を見るだけで、いつまでたっても自己の主体性を確立することができない。
21. 文中の「水掛け論」とは、どういうことか。
A) 双方が同じ立場にありながら、異なった意見でもって譲らないこと
B) 双方がすでに一致した結論を出したが、更なる討論を繰り返すこと
C) 双方がお互いに各自の立場や主張などを固執して言い張って争うこと
D) 双方がお互いに相手の立場に同意しながら、反論を繰り返し行うこと
答案 C
解析文中は「一方が自分の立場で…他方は異なった立場で…お互いに一歩も譲らず論じ合う」と説明し、それを水掛け論と呼ぶ。Cの「各自の立場や主張を固執して…
22. 文中の(ア)に入れるものはどれか。
答案 A
解析前文で「水掛け論」を挙げ、その後「揚げ足取りということがよく行われる」と同種の現象を追加するので、接続詞は「また(さらに)」が適する。逆に(逆接…
23. 文中の「文脈的理解」とは、どのようなことか。
A) 相手の話す言葉の一部分と全体が合っているかをよく判断すること
B) 相手が直接的に言葉にあらわしていない内容などもよく理解すること
C) 相手が話すことに親切に耳を傾け、最後までよく聞き取るということ
D) 相手の言っていないことを自分勝手に推測してはいけないということ
答案 B
解析文中は「言葉に現れていない場面をも考慮に入れて…理解する」ことを文脈的理解と説明する。Bの「直接的に言葉に表していない内容も理解する」が一致。A…
24. 文中の「自分の立場から事柄を直視すること」とは、どういうことか。
A) 他人の意見と一致しない場合は、自分の立場と態度を守ること
B) 他人の意見には耳をかさず、自分の考えや意見を守り通すこと
C) 自分の体験などに基づき、人の話や意見を批判的に考えること
D) 自分の素養と才能を確信し、他人の批判などに強く反論すること
答案 C
解析文中は「自分の過去の体験・素養・才能を基礎に事柄を見る」「それと相手の見方を比較して批判が生まれる」と説明。Cの「自分の体験などに基づき、批判的…
25. 筆者は、正しい理解のためにはどのようなことが必要だと言っているか。
A) 他人の意見が自分と一致しない場合は、自分の主体性を堅持する必要がある。
B) 他人の意見などは間違っていることが多く、批判的に見ることが必要である。。
C) 相手の真意を掴むと共に、主体性のある批判的精神を持つことが必要である。
D) 自分の立場を強調せず、相手の話の客観性を信じ、認めることが必要である。
答案 C
解析筆者は「相手の立場に立って理解する」ことと「自分の立場から批判的に直視し主体性を確立する」ことの両方を説く。Cの「相手の真意を掴むと共に、主体性…
読解 [二]
Directions: 次の文章の[一][二][三][四]を読んで、21~40の問いに答えなさい。答えは選択肢[A][B][C][D]からもっとも適切なものを1つ選びなさい。(2点×20=40点)
日本人と「物」との関係を考える上で、一つの鍵となるのは、「もったいない」という感覚である。「もったいない」というのは考えてみると不思議な言葉で、物を捨てる人に対して、「もったいないことをする」という場合は、「不都合な」という非難がこめられているが、誰かに物をもらったときに、「もったいないことで」と言うときは、「かたじけない」という感謝の意味である。何だか、まったく反対の意味に使われるように感じられる。日本人の考え方は主体と客体、物と心などを明確に区別しないままで、そのときの文脈に応じて適当な判断を加えているので、こんなことが生じるのであろう。昔は、食べるものが少なかった。しかし、そのためにかえって、五月の節句の柏餅のおいしかったことなどは、今でも忘れられないほどである。家で餅をつき、柏の葉を山で取ってきて、家族一同で柏餅をつくって食べる。おいしくないはずはない。ここでは、心と物との区別以前の感覚が働き、食べることによって「味わう」ことは、実に「豊かな」内容をもっている。しかし、このようなことが可能だったのは、昔は適当に物が不足していたからである。ところが、最近では物が豊かになり、それによって人間の生活は快適で便利になった。しかし、それを得るためには人間は働かねばならない。働くためには節約しなければならないし、疲れるので、なるべく心を余計なこと-といっても、ほんとはこちらの方が大切なのだが一に使わないようにしようと思う。そうなると、家庭の食事を家族で楽しむ、ということがなくなって、「貧困な食事」になってしまうのではなかろうか。心と物を分離した後で、今度は、物が心を圧迫している、というのが現状ではないだろうか。むしろ、物が心を操作しているとさえ言えるのではなかろうか。心と分離した物は計測することが可能である。重さ、大きさ、などなど。それに貨幣価値ということによって、すべての物が直線上に価値づけられる。料理にしろ、その値段ということによって計測するかぎり、すべてが上から下まで一様に順序づけられる。すべてが一様とは、色合いの差がない、ということだ。値段によって計測されると、すべての物は灰色になってしまう。しかし、「味」というものはそんなに単純ではない。同じビールでも、いつ誰と、どこで飲むかによって味は異なるはずである。各家庭の料理は、その家庭の味をもっている。「経済的に豊か」ということに、人々がこだわり始めると、その人は「味オンチ」になってしまう。「物が豊か」ということは、その色合い、味わいの多様性に気づくことではないだろうか。このように考えると、現代は、ほんとうに、物が豊かなのかどうか危うくなってくるのである。
26. 文中に「適当に物が不足していた」とあるが、その頃の状況はどうであったか。
A) 物不足を体験したことは、節約精神を確認するうえでたいへん貴重であった。
B) 物不足で、通常の日は大変であったが、祝日などはおいしい物が食べられた。
C) 物不足で大変であったが、家族と一緒に何かをする喜びを感じることができた。
D) 物不足でいつも腹を空かしていたが、多くの家族がいることは幸せであった。
答案 C
解析文中は物不足で大変だったが「家で餅をつき…家族一同で柏餅を作って食べる」喜びを説く。Cの「物不足で大変だったが、家族と一緒に何かをする喜びを感じ…
27. 文中の「貧困な食事」とは、どんな食事を指すか。
A) 豪華さだけに気を使い、栄養などの貧困さが目立った食事
B) 裕福になったにもかかわらず、逆に貧弱になってしまう食事
C) 家族が集まっても、あいかわらず昔のままの貧しさであった食事
D) 物が豊富になったが、家族と一緒に楽しむ時間が少なくなった食事
答案 D
解析文中は物が豊かになった結果「家庭の食事を家族で楽しむことがなくなって」貧困な食事になるとし、物質的ではなく家族で共に味わう時間の欠如を指す。Dが…
28. 文中「心と分離した物は計測することが可能である」とは、どういうことか。
A) 心から離れた物は、なにもかも貨幣で価値づけられるということ
B) 心を離れた物は計測しようとしても価値づけられないということ
C) 心も物も価値づけようとすれば、全て価値づけられるということ
D) 心から離れた物は、いくら価値づけても認められないということ
答案 A
解析文中は「心と分離した物は計測可能」とし、続けて「貨幣価値によってすべての物が価値づけられる」と説明。Aの「心から離れた物はすべて貨幣で価値づけら…
29. 文中「値段によって…・灰色になってしまう」とは、どういうことか。
A) 値段を気にしすぎると物の色彩が分からなくなってしまうということ
B) 何事も値段で物を見れば、すべてつまらないものになってしまうこと
C) 味の違いに値段という基準を加えてしまうと味がなくなってしまうこと
D) 料理は色彩が大切で、値段という基準だけで見るべきでないということ
答案 B
解析文中は値段で測ると「すべてが一様に順序づけられ」「色合いの差がなく」灰色になるとし、価格基準だけで見れば物の多様性が失われつまらなくなると言う。…
30. この文章の内容に合っているものはどれか。
A) 料理は色彩だけでなく、味にも心を配り、味わい方にも注意すべきであろう。
B) 豊かさは心と物を分離させ、人間が「物」を味わうことを忘れさせてしまう。
C) 豊かになっても、つねに「もったいない」という感覚を忘れるべきではない。
D) 裕福になっても、裕福の基準は家庭によって違うことを忘れるべきではない。
答案 B
解析筆者は「物が豊か」になると心と物が分離し、人が「味」を味わうことを忘れて「味オンチ」になると論じる。Bの「豊かさは心と物を分離させ、物を味わうこ…
読解 [三]
Directions: 次の文章の[一][二][三][四]を読んで、21~40の問いに答えなさい。答えは選択肢[A][B][C][D]からもっとも適切なものを1つ選びなさい。(2点×20=40点)
人は食べずには生きていけない。そして食べるためには、食べるものを作らなければならない。狩猟民や採集民にしても、獲物や採集物を、調理もせずに食べるのはまれであろう。調理は、人間生活におけるもっとも基礎的な行動であることは疑いない。が、この調理という営みに、奇妙なことが起こっている。独身の人たちにかぎらず、料理をしない人が増えてきたというのは、正確な数字情報はもっていないが、コンビニエンス・ストアやデパートの地下の食料品売り場、あるいは夜の居酒屋などの風景を見るかぎり、どうも確かな事実のようである。昼休みともなると、みずから調理したお弁当を開ける人はさらに少なくなる。ほとんどの人が社員食堂に行くか、弁当を買いに行く。パンやスナック菓子ですませる人も少なくない。作らないということは、食事の調理過程を外部に委託するということだ。調理を家の外にだすということ、そのことの意味は想像以上に大きいように思われる。たしかに、むかしは調理も公共の場で、たとえば露地の共同炊事場で行われることが多かった。その後料理の仕事は「マイホーム」に内部化されたのだが、現在ふたたびその過程が、私たちからは見えない場所に移動させられつつある。それはちょうど、かって排泄が野外や共同便所でなされ、汲み取り(掏)も私たちの面前でなされていたのに、下水道の完備とともに排泄物処理が見えない過程になったのと同じことである。それとほぼ平行して、病人の世話が病院へと外部化された。出産や死という、人生でもっとも逃れることのできない瞬間も家庭の外へと去った。家で母親のうめき声を聴くことも、赤ちゃんの噴きだすような泣き声も聴くことはなくなってしまった。いや、自分の身体でさえ、もはや自分でコントロールできず、体調がすぐれないときには、すぐに医院に駆けつけるしまつだ。自己治療、相互治療の能力はほぼ枯渇した。その点で、身体はもはや自分のものではない。誕生や病や死は、人間が有限でかつ無力な存在であることを思い知らされる出来事である。同じように排泄も、自分がほかならぬ自然の一メンバーであることが思い知らされる営みである。そういう出来事、そういう営みが、「戦後」という社会のなかで次々に外部化していった。そして家庭内に残されたそういう種類の最後の営みが、調理だった。人は調理の過程で、自分が生きるために他の命を破壊せざるをえないということ、そのときその生き物は渾身の力をふりしぼって抗うということを、身をもって学んだ。そして自分もまたそういう生き物の一つでしかないということも。そういう体験の場所が今じわりじわり消えかけている。見えない場所に隠されつつある。このことが私たちの現実感覚にあたえる影響は、けっして少なくないと思う。
31. 文中に「この調理という営みに、奇妙なことが起こっている」とあるが、「奇妙なこと」と同じようなことはどれか。
A) 狩猟民や採集民が、獲物や採集物をあまり調理せずに食べてしまうこと
B) 命を破壊されようとする時、生き物は渾身の力をふりしぼって抗うこと
C) 病人の世話が病院でなされ、出産や死の瞬間も家庭の外へと去ったこと
D) 排泄が野外や共同便所でなされ、汲み取りが眼前で行なわれていたこと
答案 C
解析文中の「奇妙なこと」は調理が家庭から外の見えない場所へ移る(外部化)こと。続く文脈で「病人の世話が病院へ外部化され、出産や死も家庭の外へ去った」…
32. 文中に「赤ちゃん・・・聴くことはなくなってしまった」とあるが、それはなぜか。
A) 今では自分の家で赤ちゃんを産むようなことがほとんどなくなったから
B) 赤ちゃんが泣き出す前に医者や看護婦が適切な処置を取ってしまうから
C) 昔と違って、今の赤ちゃんは噴きだすように泣く元気がなくなったから
D) 医学の発達で子供を生むのも科学的な処置が取られるようになったから
答案 A
解析文中は「出産…も家庭の外へと去った」ため、家で赤ちゃんの泣き声を聴くことがなくなったと説く。Aの「家で赤ちゃんを産むことがほとんどなくなったから…
33. 文中の「身体はもはや自分のものではない」とは、どういうことか。
A) 自分の身体は自分のものではないという意識が強すぎること
B) 自分で自分の身体を管理する能力が薄れてしまっていること
C) 身体の抵抗力が医学の発達によって弱体化されてしまうこと
D) 身体が弱まってしまい、体を管理する気さがなくなること
答案 B
解析文中は「自分でコントロールできず」「自己治療の能力は枯渇した」とし、その結果「身体は自分のものではない」とする。Bの「自分で身体を管理する能力が…
34. 調理について、文章の内容に合っているものはどれか。
A) 調理は人間が自然界と自分自身を認識する数少ない行為の一つである。
B) 調理は時代とともに外部化され、家庭から完全に消えていくであろう。
C) 調理は過程も大切であるのは言うまでもないが、結果も重要であろう。
D) 調理が社会的な重要性を失いつつあることは、理想的な結果でもある。
答案 A
解析文中は調理を通じ「他の命を破壊せざるをえない」「自分もそういう生き物の一つ」と学び、自然と自己を認識する場だと説く。Aの「自然界と自分自身を認識…
35. この文章で筆者がもっとも言いたいことは何か。
A) 調理を通して他の生物の生命の強さをはじめて知ることができる。
B) 料理をしない人達が増加している事実を正確に認識すべきである。
C) 自分で作った料理は、外から買ってきたものよりずっと栄養価値が高い。
D) 調理過程の変化が人間の心理に及ぼす影響は軽視すべきではない。
答案 D
解析筆者は結びで「調理過程が見えない場所に隠されつつあることが、私たちの現実感覚に与える影響は少なくない」と説く。Dの「調理過程の変化が人間の心理に…
読解 [四]
Directions: 次の文章の[一][二][三][四]を読んで、21~40の問いに答えなさい。答えは選択肢[A][B][C][D]からもっとも適切なものを1つ選びなさい。(2点×20=40点)
山の七合目の分岐点で帰りのケーブルカーとすれ違うと、あとは窓にしだいに明るい空の分量が占められてくる。やがて上の駅のホームが近づいてきた。山頂の展望台に行くと、弟はまたそこでハーモニカを鳴らした。わたしは高いところが苦手なので、天辺の限られた面積を歩いていると、空に踏みはずしそうになる足の感じを恐れた。「見て、見て。」と崖のところで弟が水平に手を広げて呼んだ。「姉さん、見てごらん。」彼は広げた両手を水平に、羽ばたくまねをして、「ぼく、鳥になろうか。」「危ない。」わたしはずうっと後ろのほうから、声ばかり大きくして叱りつけた。昼近くなる頃にはそれでも山頂は登山者でだいぶにぎやかになった。展望台の裏の人気のない草地に腰を下ろして、わたしたちは弁当を開いた。包みを開けると祖母の作った握り飯が出てきた。たぶん祖母はたいへん慌てて作ったのだろうが、そのことを差し引いても、やけに大きい凸凹のお握りは彼女の手つきの不器用さを物語っていた。おかずは煮しめである。急いでいたので朝ご飯の副菜をそのまま詰めたのだろう。そして祖母は肝心の箸を入れ忘れていたのだった。「どうする。」わたしは弟を見た。「ぼく、箸作ってみようか。」彼はズボンのポケットから鞘の少し錆びた小刀を出して見せた。
それで、わたしたちは弁当をまた包み直すと木陰に置いて、山頂の裏手の林へ行った。彼は歩きながら箸を削る木を物色した。彼は一本の柿の木を見つけると幹を登った。片腕を幹に回し、もう片腕を伸ばして適当な枝を折った。彼はそれを見上げているわたしの足もとへと三、四本降らせた。柿の木の根方にあぐらをかいて、弟はまるで祖父そっくりの器用な手つきで枝を削った。丁寧に丁寧に削いだ二本を、「はい、姉さんのぶん。」とわたしにくれた。それからまたそろそろと慎重に削いで、「これは、ぼくのぶん。」と、草の上に置いた。長さがみんな少しずつ違う、なま木の色をした箸ができた。わたしたちはそれを持ってもとの展望台のところへ帰ると、弁当を食べた。彼の削った箸はごつごつしてわたしの指を傷めそうだったが、それでも口へ運ぶたびに木のかすかな匂いがした。「これ、持って帰ろうか。」とわたしが言うと、弟はお握りをほおばりながら、「いいから捨てといて。」と首を振った。「また、いつでも作ってやるよ。」満足そうに言うのだった。弁当を済ませると、わたしたちは草の上に寝た。明るい空の色が閉じた瞼の裏に映った。鳥の声や蝉の声が耳に流れ込んだが、それはわたしに眠たいような、うっとりした気分を催させた。わたしたちは少しの間ほんとうに午睡した。
36. 文中の「窓にしだいに明るい空の分量が占められてくる」とは、どういうことか。
A) 窓の外に見える空にかかっていた雲が、段々明るさを帯びてきたということ
B) すれ違うケーブルカーに遮られていて見えなかった視界が開けたということ
C) ケーブルカーの上昇に従って、広い空が眺められるようになったということ
D) 七合目で乗客が降りて、窓の外の景色がよく見えるようになったということ
答案 C
解析文中は下山するケーブルカーとすれ違いながら「上の駅」へ向かう上昇中の情景で、「明るい空の分量が占められてくる」は高度が増すにつれ窓から見える空が…
37. 文中に「ぼく、鳥になろうか」とあるが、この時の弟の気持ちに近いものはどれか。
A) 危険な崖に立って緊張した気持ち
B) 地面に足がつかない不安な気持ち
C) 山頂に到着して解放された気持ち
D) 山が低いので安心している気持ち
答案 C
解析弟は山頂の展望台で両手を水平に広げ「鳥になろうか」と羽ばたくまねをし、解放感に満ちている。Cの「山頂に到着して解放された気持ち」が合う。A(緊張…
38. 文中に「ずうっと後ろのほうから、声ばかり大きくして叱りつけた」とあるが、それはなぜか。
A) 弟のすぐそばに来て叱り付けたら、かえって彼を危険に陥れるから
B) 自分は高い所が苦手なので、足がどうしても思うように動かないから
C) ようやく山頂に着いたので、展望台からの眺望に気を奪われているから
D) 頂上の面積がそれほど広くないので、後ろからでも弟は十分聞こえるから
答案 B
解析文中は「わたしは高いところが苦手なので…足の感じを恐れた」とし、そのため崖には近づけず後ろから大声で叱ったと説明。Bの「高い所が苦手で足が思うよ…
39. 文中に「これ、持って帰ろうか」とあるが、この時の「わたし」の気持ちに近いものはどれか
A) 弟がわざわざ作ってくれた箸なので大切にしたいという気持ち
B) 嫌いな木の匂いがする箸なので早く捨ててしまおうという気持ち
C) 弟がせっかく作った箸なので、祖母に見せてあげたいという気持ち
D) 柿の木で作った箸なので、その価値を弟に知ってもらいたいという気持ち
答案 A
解析弟が柿の木の枝から丁寧に削って作ってくれた箸なので、わたしは「持って帰ろうか」と大事にしたい気持ちになる。Aの「わざわざ作ってくれたので大切にし…
40. この文章の内容に合っているものはどれか。
A) 祖母は不器用な人であるが、祖父はたいへん器用な人だ。
B) わたしと弟は疲れたので、木の根方で少しの間昼寝した。
C) 弟はズボンのポケットから自分で作った箸を取り出した。
D) わたしは弟自作のごつごつした箸で指を傷めてしまった。
答案 A
解析文中は「お握りは彼女の手つきの不器用さを物語っていた」と祖母の不器用を、「祖父そっくりの器用な手つきで枝を削った」と祖父の器用を示す。Aが一致。…
II. 読解 B
Directions: 次の文章の下線のついた部分を中国語に訳しなさい。(3点×5=15点)
のついた部分を中国語に訳しなさい。(3点¥5=15点)
元来、文字というものはどこにでも当てはまるもの、一般的なものです。葉という字は松葉にも杉の葉にも、銀杏やアスパラガス(芦笋)の葉にも当てはまります。家という字は私たちが電車から眺める一つ一つ違ったどの家にも当てはまります。赤とか緑とか、長いとか短いとかいう字もいろいろなものに適用できます。このように、一つ一つはユニークな、唯一独自なものを表そうとするのです。
それからまた、文字は固定したもの、不動なものです。それを用いて、人は動いているもの、空気のようなものを示そうとするのでありますが、それはほんとうは無理なことであり、はっきり言えば、できないことであります。それはちょうど、網の目をどんなに細かくしても、水の流れは掬えないのと同じであります。にもかかわらず、それをしなければ、私たちは自分の思想を他人に伝えることができません。
もっとも、別の方法で思想を伝えることもぜんぜん不可能ではないかもしれません。いわゆる以心伝心、つまり直接に心に伝えるということも、可能であるかもわかりません。しかし、書物はそのことを文字と文章とによってしようとするのです。したがって、そのことを
読者の側から言えば、本を読むとは、書かれている文字をたどることではなく、文字を手がかりとして、その奥に潜んでいるものをつかむ字をたどることではなく、文字を手がかりとして、その奥に潜んでいるものをつかむことであるということになるのです。イキリスの思想家ラスキンは読者をつるはし(洋)をふるって金鉱を求めてゆく抗夫にたとえております。
そして、奥にある金鉱に達するためには、外側にある固い鉱石を打ち砕かなければならないと申しております。ともかく、文字という固い、不動なものを突き抜いて、その奥にある動的な、というよりも燃えていると言ったほうがいいと思われる思想そのものをとらえねばならないのです。
41. 参考答案
文字原本就是适用于所有场合的、具有普遍性的东西。叶这个字,既适用于松树叶、杉树叶,也可以用来指银杏或芦苇的叶子。穿这个字,适用于我们从电车里看到的每一个不同的家。
42. 参考答案
另外,文字还是固定不变的。人们想用文字来展现变化的、如空气一般的事物,但那其实是很困难的,说的再明白点,是不可能做到的。
43. 参考答案
不过,或许用其他方法来传递思想也并非不可能。所谓的以心传心,也就是直接心灵相通,或许也可以实现。但是,书籍却想要通过文字和文章来传递思想。
44. 参考答案
从读者的角度来看,读书并非是将所写的文字顺着读下来,而是以文字为线索,领会其中深藏的内涵。英国思想家拉斯金将读者比作挥动着洋镐寻找金矿的矿工。
45. 参考答案
并且他还说,想要找到深处的金矿,就必须击碎外部坚硬的矿石。无论如何,我们必须贯穿坚固不变的文字,去领会深处那变化着的,不,应该说是燃烧着的思想本身。
III. 作文
Directions: 次の指示にしたがって、450字~500字の作文を書きなさい。
ネットでの資料調べが便利になったのは進歩である。しかし一方では、以前のように苦労して論文を作成せず、ネット資料の切り貼りだけで済ましてしまう現象が問題になっている。こうした現象について、あなたの考えを書きなさい。
- 自分でテーマをつけること
- 「だ・である」体で書くこと
- 漢字を使うべきところは漢字を使うこと